春、
るか



春、
花々の精気が既に雪の下で匂やかだ、やわらかく傾斜する日差しはまるく、
やがてくる命の現れを優しく促しています、この真昼の自然の営みが私の
声を滑らかにする、わたしの身体もまたこうして朽ちて、あたらしい生命
の糧になることができたらいい、そんな夢想を誘われる二月のある時の眠
り。川の流れは滞ることなく、歴史の弦楽を奏で続け、青空の下で厳しい
緑いろした葉はつめたい風にふるえているが、それは春の訪れを祝う舞踏
です。青臭い愛の歌のようにせつない音色を響かせるのは巣から顔を出し
た雀たち。雪の上の足跡には血の染みのかげもない、わたしたちがあんな
も求めていた自由の意味を、雀たちは知っているかのようで。不意に思い
出される事。あの時に立ち止まったのはわたしだったのでしょうか、あな
たでしょうか。おそらく少なくとも影において、わたしたちは重なってい
る。折れたあおい茎から白っぽい水が毀れています。破れた約束のせいで
そんなにも嘆かないで。わたしたちには永遠に近い時間が必要です。かな
しみの意味も、幸福の在所も明らかになるその瞬間まで、雀たちが歌いや
まないように。わたしたちもまた、生命の歌を囁き続けましょう。



自由詩 春、 Copyright るか 2009-02-17 14:04:40
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