オルゴール
るか
ぼくたちの鳥は、預けられたまま
誰もいない部屋の
つめたい鳥かごのなかで
ひくい声でうたっている
透明なガラス瓶と花
傾いたテーブルは沈黙で伴奏し
薄いカーテンから秋の日が
名残惜しげな温もりを
壁面や 床に伝えている
( ここにはない ここにはない )
響いているのは
ぼくたちが
いつの間にか忘れ去った
天使の童謡のリフレイン
あの なにげない殺戮の
あいだじゅう ぼくたちの鳥は
歌いつづけていた
囁きつづけて
いた
言葉を奪われた、ぼくたちは
まだ話せない子どものように
林檎の涙を零すばかりで
プラスチックの玩具に
涙の粒が落ちる
が
そこにあの子の姿はなく
からっぽの部屋のドアを叩くのは
文字の消えかかった
表札ばかりで
それから
うたう鳥の羽根をつつむ
手のひらのような物語を
ぼくたちは捜して
からっぽの心に
広がる草原のうえに
鳥を放してやりたかった
かごをひらく合鍵を
やりきれない自由を浮かべる
空の
どこかに求めて
ぼくたちの鳥は、預けられたまま
誰もいない部屋の
つめたい鳥かごのなかで
ひくい声でうたっている
言葉を奪われて、
ぼくたち は
ただただ 獣のように
呻いては
果てて
ゆく
(この幼生の独白は/いつか
意味を/帯びること/が
できますか )
せつないぼくたちの
あこがれ
よ