どうでもいいこと
Giton
どうでもいいことなんだけど、
おれが死んでも君は悲しまないことに決めようじゃないか、
あとで君に約束させるのはぜったいに無理だから、
いまのうちに約束しとくんだ、
そうすると、ある日仕事帰りに電車のなかでうつらうつらしてたおれは、
そのまま目覚めなかったとする、
面倒がないように地下鉄にしよう、
トンネルが落盤して、そのまま電車もろとも埋もれてしまうんだ、
遺体も出ない、墓を造ったってそんなものは気休めだ、
そこで、きみは約束どおり涙も出さず、
おれの親兄弟が葬式したって行きもしない、
...それでこそ、おれの生涯ただひとりの人だ、愛してるぜ...
おれがいなくなった以外はいままでどおり、
きみは仕事もし、恋もする、きみの記憶のなかに
おれが格納されていることは否定しない、
きみのなかのおれは、きみが死ぬまで君といっしょだ、
しかも君の生きて行くのに応じて、きみのなかのおれも変化する、
おれが生きるのをやめるのは、きみが死ぬときだ、
だから、おれはそうやって生きて行こう、
おれが生きているときも、死んだあとも。