light the light
木屋 亞万
生まれる前の僕は壁に囲まれていた
生まれると同時に天井で蓋をされ
それからここはただの暗闇
立方体の箱で僕を飼いながら
肉体は日々の中で生存し続けた
目は目として、耳は耳として、口は口として、鼻は鼻として、手は手として、
すべての器官は、それぞれ肉体として、機能を果たしていた
生まれる前、空を見るのが好きだった
それが正方形に切り取られた空だったとしても
生まれるまではそれこそが僕にとっての空だった
星はゆっくり輝きながら空を牛歩で進んでいくのだ
生まれる前、花の香りが好きだった
春先に吹き込んでくる桜の花びらが美しかった
それが桜だと知らなくとも、それが桃色だとわからなくとも
こころに温気を吹き込まれる心地よさと切なさは胸に溜まっていた、から
生まれる前、蛍と雪に出会っていた
それを同じ種のものだと思い込んでいた
星が空から剥がれてきたようにぼんやりと輝き
蛍は翌日黒い粒、雪は白い床に溶けるような白
生まれる前、たくさんの音楽を聴いた
それが蝉の声なのか、女の声なのか、弦の声なのか、皮の声なのか
何一つわからなかったくせに、魂を込められた音色に呼応する受け皿はあった
楽しかった、見えない光を感じるような、真昼の花火の空回り
生まれる直前に、大きな炎を見た
器官が熱を帯びて、繋がりあっていくのを感じた
これから僕が大きな命になる間、小さな命の隙間のなかで、僕は
天井に押し込められて、生きていくことになったのだ
頭脳を箱から出すために、僕は箱に天井という蓋をして、
それを肉体のつながりのなかに隠した
僕の虚像が実体を持ち、器官を支配し、そのつながりに支えられ存在している
光の入る余地がない、息苦しい箱の中に僕は残されたまま
再び肉体の機能のつながりが解けるまで、僕は苦悩の中にいる
でも、暗い部屋の中で、思い出す
空の星の輝きを、花びらと香りを、光る粒たちを、音のつながりを
肉体の感覚器と壁がわずかに共鳴しているから、
外側の僕が感動するたび、箱の中の僕は光を目にする
色とりどりの知識の炎を
light
the light
so to gaw an o bok u
out oun ega im as u