この朝、流れゆくものは
キキ
翳りはじめた葉の陰でねむる日の
腕をのばし
触れた輪郭を
最初のものとして、覚えておこう
たゆたう
まだ眼をあけてはいけない
つたい流れてくる感触は、にぶい冷たさにふるえ
昨夜、飲みおいた
グラスのへりについた
くちびるの跡と
おもてを覆う湿温のゆらぎ
眼を開けて
掴んだものを確かめてみれば
瞳のない
すべすべした白い蛇のような
入りこむ隙もない
入りこんだ跡もない
軒先の地面には
濡れた跡もない
晴れた日が七日続いたあと
庭のすみに
死んだものたちを掃き集めた
庭には埋められるべきものが山積みになって
それらすべてが
いれかわり、たちかわり
夢に現れる
この日、蛇のいった跡を見つけた
後もなく先もなく
緩やかな曲線を三歩ほど残して
雨はまだ降らないが
湿り気ばかりが増してゆく
夢のなかで掴んでいたものを
放つ朝、
朝はまだ遠く
過ぎてゆくものすべての輪郭はあいまいで
夢というよりは、幻のように
やさしい