泡の鏡 
服部 剛

忙しい日々から逃れ 
疲れた体を暖めようと 
平日の人気ひとけ少ない温泉で 
頭の上にタオルをのせて 
露天風呂に沈んでいた 

ゆげの立ち昇る 
水面に 
現れては消えてゆく 
無数の泡の鏡に映る 
家族や友の顔・顔・顔・・・ 

いつか人は 
御多分もれずに燃やされて 
灰になり 
煙突の先から、真っ青な空へ吸いこまれ 
ぽかんと浮かぶ 
雲になる 

( やがて地上を潤すように 
  静かな静かな、雨が降る・・・ ) 

今迄に地上で生きた 
数え切れない 
泡達のこころ 

空気中に漂いながら 
地上に残された僕等を 

あっためよう あっためよう と 

顔を持たない 
風の姿で 
今日も何処かを、吹き渡る 








自由詩 泡の鏡  Copyright 服部 剛 2009-02-14 23:26:14
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