教会
あ。
まだ背の低い中学生だった
キリスト教系の学校だったせいもあって
敷地内には教会が建っていた
戦時中は負傷兵の収容に使われていたという
改築はしたことがないらしく
昼間でも暗くて冷ややかな空気が流れている
ある日の放課後
暇を持て余していた私は友人と教会に行った
シスターが掃除をしていたが
しばらくすると終わったらしく出て行った
教会には私と友人しかいなかった
校舎とは離れたところにあるため
同じ学校内とは思えない静けさ
その沈黙さえも音がするような
後ろのほうの席に着く
十字架を見上げ
何とはなしに手を組む
意味も解らず暗記してしまっている祈りを唱える
毎日唱えているものなのに
急に言葉に重みが加わる
思わず十字架から目をそらし
友人の手を引いて教会を出た
私はクリスチャンではない
だからいけないと思ったのだ
意味を成さない言葉を放ってはいけないのだ
数年後 教師が結婚式にその教会を使った
あんなに暗く感じたのが嘘のように
太陽の光を浴びていた