穴の唄 (2)
桜 葉一


深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
自分が横たわった
気付くと夫が隣に寝ていた
空が少し高く感じた


深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
仕方なく穴を埋めた
埋まったのは
暇だった時間


深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
仕方なく夫を埋めた
次の日
そこから目が出て鼻が咲いた
気味が悪いので
ごみ箱に捨てた


深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
タイムカプセルを埋めた
でもタイムカプセルに入れるものがなかったので
吐息をそっと入れておいた
十年後の風は心地よいのだろうか


深く広い穴を掘ったけど
埋めるものがないことに気付いて
もっと深く掘った
金銀財宝は出てこなかったので
地下シェルターを作った
そこで啜るコーヒーは思いのほか美味しい


自由詩 穴の唄 (2) Copyright 桜 葉一 2004-08-18 00:24:46
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