浴室
ことこ

湯船のふちまでお湯を張る
そっと揺らさぬように
しずかに身を沈めると
溢れ出たお湯が
洗面器をさらった


体の芯がやわらかくなるまで
ゆっくりと数をかぞえる


  幼い頃
  半熟卵の黄身のような
  浴室のまるい照明が
  お月さまみたいだと
  おもっていた


ひとすじ ひとすじ
もつれていた感情が
ときほぐれて
天じょうへ
のぼってゆく


  やさしい言葉など
  なにもいらない
  どうせ、ふやけてしまうから


ここでなら
あのころのように
人目もはばからず
泣くことが
できるのだ


自由詩 浴室 Copyright ことこ 2009-02-12 23:09:38
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