春一番と彼岸花
小池房枝

ヒガンバナが咲いていたのを覚えていますか
赤い花
夏の終わりを縁取り
秋には倒れ
文字通り倒れ
それから細い葉をあおあおと
そこに広げていたのもご存知でしょうか

やがて季節は冬を迎えて
冬の最中に早春を迎えて

早咲きの水仙たちはもうつんつんしている
遅咲きの水仙たちももうつんつんしている

おんなじつんつんだけど草臥れて
文字通り草臥れて
萎れ始めているのがヒガンバナです
薄緑と濃い緑のストライプからも
ヒガンバナの葉っぱであることがわかります

競争相手の少ない
光り豊かな秋と冬を震えながらも気ままに過ごして
オータムエフェメラル
というには長い半年
次に咲くだけの貯えはもう出来ました
さぁ
春です
啓蟄を過ぎれば
ヒトたちも動き出す

あなたたちが桜を見ることがあるのかどうか
それは私が見ていてあげる

見ていてあげるから安心して
好きなとき
根の国へお帰り
そうして秋にまた
鮮やかに立ち昇っておいで


自由詩 春一番と彼岸花 Copyright 小池房枝 2009-02-12 11:31:14
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