オーキュペテーとケライノー
小川 葉

 
あなたはわたしの
子ではないと
ある日母が言ったなら
その日から
またその日までも
子は母の子ではないように
自らの記憶を再構築し
それからつくられる記憶さえ
再構築しなければならないだろう

その逆もまたあるとしたら
あなたはわたしの
本当の子なの
とある日本当の母ではない
女が言ったなら
同じように人生が
再構築されてしまうのだろう

神話であれ民話であれ
現実世界であれ夢の世界であれ
真実などどこにもないのではないかと思う
真実は自分でつくるしかないように
つくられたのだと

老人は跡継ぎに
嘘を伝えて息を引き取った
跡継ぎの息子が
その嘘を見破ることになるとは
その時
誰も考えてなどいなかった

(つづく)
 


自由詩 オーキュペテーとケライノー Copyright 小川 葉 2009-02-11 22:33:52
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