盗んだ桃は。
Anonymous

10歳も年下の詩人の言葉。

訳知り顔で愛をかたり
人の眼を凝視する。

僕は見透かされている。
ただただ
負けまいという10年のキャリアという薄っぺらな矜持を持って
対峙する。

薄っぺらの矜持なんてガラクタの為に
僕は心のうちをさらけだす。





この辺に縄張りを張るあの猫は

僕の鼓動にいらだっている。

それが彼に危害を加えないそんなのわかっている。

だけど

彼はいらだちを隠せないでいるし。
僕は鼓動をとめることはできない。

僕はヤツの眼に詩人の言葉を見る。
僕はヤツの物腰に奪えないあいつの心を感じる。


放置したぶどうは

刻一刻と身を崩し形を崩す。


盗んだ桃は

岩のように硬かった。


放置した愛は

かさかさに乾き
無臭無害な砂粒へその身を窶す。


盗んだ愛は


足がついて転売もままならない。


僕はただ、見つめる眼を見据える。


銃口を僕のこめかみにねじりこむ
銀行強盗と

ソファで話し込んでしまうような。

そんな

立ち位置を消失するような

そんな眼を。


自由詩 盗んだ桃は。 Copyright Anonymous 2009-02-09 00:19:49
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