円い湖
Giton
丘と木々に円く囲まれた円い湖に
憧れていた、いつか行ってみたいと思っていたから。
社会科の時間は、いつも地図帖を探していた;
北海道に1個、鹿児島県に1個、お誂え向きの湖を見つけると、
こんどは、社会科の時間には、地図帖を眺めて悦に入っていた、
こんな遠くでは、行くことはあるまいと思っていたから。
そういうぼくを目ざとく見つけて、その人は言ったものだ:
頭で考えて悦ぶのは、もうおやめ!さあ、私をそこに連れてって。
そこで、ぼくは鹿児島の湖の畔では、宿のかみさんが仰天するほど畳を揺すり、
北海道の湖の真ん中で、ボート屋があわてるほど、その人に大声を上げさせることになり、
こうして、幼いふたつの夢をその人に捧げたのだったが、
いかんせん、そのあとは、その人の誤算だった:
子どもの夢が実現するや、子どもは大人にはならず、
また次の夢を考え出して、追いかけ始めたのだから。