偽善じゃない、真実
緋月 衣瑠香

幸せになりなさい
私の分まで幸せになりなさい
こんなところに君はいてはいけない
こんな暗闇の中に君はいてはいけない
私は放っておいてはやく行って
光射す眩しい世界へ

私はここから出れないから
君だけあっちへ行って

ちがう
ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがう
そんなことを思っているんじゃない
そんなことを言いたいわけじゃない

本当は一緒に行きたいのに

ちがう
ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがう
君の幸せは私の幸せだけど
私の幸せも私の幸せなんだよ

本当は一緒に光を見たいのに

君があっちに行けるのなら私を置いていくでしょ
だって他人だもの
何もお互いのことは知らない
ただの他人だもの

幸せになりなさい
私の分まで幸せになりなさい
こんなところに君はいてはいけない
こんな暗闇の中に君はいてはいけない
私は放っておいてはやく行って
光射す眩しい世界へ

私はここから出れないから
君だけあっちへ行って

ちがう
ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがう
全然ちがう 全部間違っている
何もあってない

君はこの世界から出られない
君の心はこの世界の色に染まっているから
君こそがこの世界の住民だから

私が
私こそがこっちの住民と偽ったあっちの住民だから
いつか私が君をこっちの世界へ置いて行ってしまう
他人だから

ちがう
ちがう、ちがう、ちがう、ちがう、ちがう
それもちょっとちがう
真実じゃない

私は君をあっちの世界へ連れて行きたかった
君を救いたかった
光の眩しさを教えてあげたかった

でも私は知ってしまった
君の心に住みつく闇の深さを
私にはその闇をかき消すほどの光を持っていないことを
お互いにお互いのことを知らないことを
信じられないことを

本当の本当は
どこか似ている君の心と繋がりたかっただけだった



自由詩 偽善じゃない、真実 Copyright 緋月 衣瑠香 2009-02-07 19:24:01
notebook Home 戻る