決意
たりぽん(大理 奔)

ぶどうはブドウとよばれてから
葡萄になったのでしょうか
私が生まれてきたとき
やさしくよばれた名のように

もう一度、問うてもいいですか
せみはセミとよばれてから
蝉になったのでしょうか
幼虫を割って暗闇に生まれたとき
誰にもよばれなかった名のように

何かを目指して生きるのが
息苦しいと感じた金曜日に
あなたは私の名をよんで
それからです
私が葡萄や蝉になったのは

らしく生きる、のは飽きましたね
いくら自分を探しても
見つかるはずがなかったのです
ワタシが私であるのだから

さあ、故郷を離れる旅に出ます
力尽きるときには
墜落よりも沈没がいいのです
深くふかく、闇に還っていけるから

だからレバノン杉で作りましょう
記憶を置き去りにするための乗り物を
生き残れなかったものを
忘れてしまうための
棺桶に似た、そう
巡礼への旅立ちのために

まぶしい世界に生きるには
弱すぎる名前たちのために






自由詩 決意 Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-02-07 18:18:54
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