ねこ
山中 烏流
ひとしきり被ったあとで
ようやくアレルギーに気付いたが
どうやら手遅れのようで
ああ、また、目が痒い
我慢していても
くしゃみが止まらないから
たちまち
みんな逃げてしまって
気付いてから間もなく
私は、いつか見たであろう
みすぼらしい姿になった
詰まる息に喉が鳴き、
段々と苦しくなっていく
しかし、どうだろう
私が被っていたたくさんは
既に
方々へと逃げ去ってしまったというのに
何が引き金となって
私の喉は
こうもいたずらに遊ばれるのか
何か飲んでみてはどうだろう
思い付きというよりは
閃きに近い何かで
冷蔵庫の取っ手を引く
並んだ紙パックから
見慣れたものを選んで口を付ける
だからと言って、別に
そんなに好きではないし
大して美味しくもない
寒気が止まらない
思えばいつもそうだったような
そんな気がしている
顔を洗い、鏡を見て
私ははっとした
こんなところにいたのなら
なるほど
治る筈がない
窓の外から
聞き慣れた声がして
私はまた、いつもと変わらずに
玄関へと向かう
ふいに当たった尻尾で
何か倒したみたいだけれど
被るのはもう面倒だから
知らないふりで、いいだろうか
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