復活の手 
服部 剛

祖母がこの世を去る朝 
何処か遠くへ
吸いこまれそうな場所から 
必死で僕の名を呼ぶ声に 
目を覚ました 

数日後、教会の告別式で 
神父は聖水を遺影に撒いて 
額に納まった祖母の笑顔に 
ひとすじの涙が 
頬を伝った 

祭壇の脇に立った僕が 
震える声を振絞り、聖書を朗読すると 
あちらこちらで、漏れ始める
祖母を愛した人々の、涙声・・・ 

あふれるほどの花々で
埋め尽くされた棺桶に
祖母の寝顔は微笑んで
不思議と口を開いてた 

職場に戻って十日後の昨日 
勤務後の休憩室で
くたびれて寝ている僕の
右膝に 
誰かの手が、ふれて 

目を覚まして 
身を起こした 
無人の休憩室 

時計の音だけが 
いつまでも、響いていた 








自由詩 復活の手  Copyright 服部 剛 2009-02-07 02:40:08
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