星宙間をゆくキャラバンの宴
相馬四弦
ひとつの瞬きの中の
帷の綻びから深遠を見つめる少年の
そのはるかな頭上を
商隊が騾馬に荷車を牽かせて
かぽかぽと銀河のほとりを迂回してゆく
どこか遠くの ずっと若くて活気のある星団へ
時の砂つぶを売りにゆくのだ
鷹避けの笛を吹き鳴らしながら
宙天を走る彗星の灯の
どこまでも遠い白に導かれる
今夜は砂漠を越えて シリウスの麓に宴を開いた
桑の木の枝にランタンを吊るして
蚕豆を羊のミルクで煮込み 仔鹿の干肉を炙れば
その幸せな香りは
千億が瞬く渦の中へと吸い込まれてゆく
月の双子が歌い踊り 郷里を想うシタール
その幸せな音色は
千億が瞬く渦の中の
ひとつの瞬きの中から
ちいさな夜を見上げる少年の瞳に吸い込まれてゆく