飾り窓のひと
恋月 ぴの
お茶を挽く
この歳になってそんなことばの意味を知る
四畳半にも満たない小さな部屋
気まぐれなエアコンの吐き出す乾いた暖気が
枕元に畳んだ洗いざらしのタオルへ靡く
恋人にしてあげてるでしょ?
何十何百人もの女の子に同じ言葉を吐いてきたのだろう
親しげそうな口調でありながら
断崖絶壁で決断を即すような冷徹さを滲ませ
君のばあい、清楚な感じなんだしさ
もうちょっとなんだよね
ナンバーワンで稼ぐのだって夢じゃないのにねぇ
射精を即す陰嚢が小さく引き締まり
これ以上膨らみきれない程に膨らんだ亀頭は滴を垂らす
口の中に出されるのが嫌な訳ではないけど
どうしても亀頭から口を離してしまう私がいて
ちいさな呻き声を合図に
尿道から噴き出した青臭い精液が男のひとの下腹部を汚した
あの臙脂色のストールって
遠いところへ行ってしまった娘さんからのプレゼントなのかな
今日も見かけた老女の丸い背中
止むことを知らぬ繰言が私の耳元まで聞こえくるようで
誰かさんって私の母、それとも私自身なの
来客を知らせるインタフォンが私を現実に引き戻し
いそいそと身支度を整える春売りおんなの襟足は
情けなさとは対極の心模様に堕ちて酔いしれる