若い女
ヨルノテガム




 マクドナルドの隅で自慰をして
 汚い安食堂のうどんで身体を温める
 指の指紋が剥がれるくらい
 心が痩せて
 今日も化粧のノリが悪過ぎるわ

 明日が春で
 あさっては春
 しあさって夏がきて
 ひと月もしないうちに冬ね
 お空とネオンがそう言っている
 パンストの伝センが体中に拡がって
 あの男の分だけあたしの体温は奪われていく
 体の芯が氷水みたく

 あたしは外に出かけるわ
 電車に人が乗っていない
 降りる頃に人がたくさん入ってくるの
 骨ばかりになった街のレントゲンを眺めて
 ハイヒールの音が街の病気に手を加える
 傷んだ所を傷めて
 弱ったところを弱らせる
 殺すのはあの男たちに任せて

 *

 あそこの隅で自慰をして
 あそこの汁で身体を温める
 指先が自分のじゃないくらい白く伸びていく
 隣の男に 今日は冬なの? と聞くと
 季節はわからないがあなたの待っている呼吸を
 ぼくも吐き出すことがある、と。 聞こえた気がした 

 消え入りそうな男の背中に
 顔を埋めたとき
 硬い服の生地から
 僅かな温もりを感じることができた
 まるで春だった

 あなた名前は?
 仮の名でいいの












自由詩 若い女 Copyright ヨルノテガム 2009-01-30 00:33:42
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