冬の片隅で
かんな
脱ぎ散らかされた
コート
冬のしめり気
誰が
ぬくもりを求めて
どこへと旅立ったのか
探して
さがした
マグカップの縁の
ブラックの
コーヒーの跡だけが
もう
冷たくなって
たちのぼる
湯気に
恋をしたの
ペアグラスをつたい
流れていくはずの
涙は
あなたへの
ひとつの伝言
それは透明でいて
なつかしい
あの、冬の匂い
ボールの中のリンゴの
真っ赤な皮を
ひとつ
手にとってかじる
その
傷みは
左胸にあった
かもしれないわ
脱ぎ散らかされた
コート
腕を通せば
あなたのぬくもり
どこへと旅だったのか
もう
見つけられない
冬の、切れ端