レコードショップの隣に
あ。

錆びた自転車がペダルをこぐたびに
ぎいぎいと耳障りな音を立てる
右足でライトを点ける
ぎいぎいの上に
ライトの点くぐんぐんとした音が加わる



太陽の出ている時間に外に出ていないと
とっても損をした気分になる
決してアウトドア人間ではないのだが
日光が出ているのに浴びていないと
チャンスをみすみす逃したような




仕方ないってわかっているんだ
わかっているんだよ




しばらくぎいぎいとこぎ
物心ついた頃には既にあったレコードショップの前を通る
この時代に蓄音機が置いてあり
古い古いブルースが流れている
店主のお爺さんはいつも居眠りだ




レコードショップの隣
自転車を止める
鍵をかけて建物を見上げる
この建物も恐らく自分より年上であろう
近年開けているこの商店街の中でも
この二軒は異質な光を放っている




すっかり暗闇になった
白い息を吐きながら建物に入る
生まれたときからこのままなのかと思うような老人
彼が私の救世主だ




どうしましたか?
咳と痰が止まりません
熱が下がりません
胸をとんとん背中をとんとん
口をあけて中を覗くと
お薬出しておきますね




外に出ると相変わらずの蓄音機が
今度はジャズを流していた
何てここに似合わないんだろう
でもそれが嫌いではない



明日にはきっと
熱が下がって
太陽の光も浴びられるだろう
時代に取り残されたあの二軒は
今日も私に優しいのだ







自由詩 レコードショップの隣に Copyright あ。 2009-01-26 21:38:12
notebook Home 戻る