爪切りげんまん
伊那 果

 プツリプツリと
 切り落とすたびに
 何かを
 はじいてしまったような
 夜のはざまに
 落ちていく
 三日月のような
 たくさんのかけら

 研げばいい
 ぴかぴかに
 磨き上げればいい
 この指先の
 ちっぽけな矜持

 切れ味の悪い
 爪切りをねじこませながら
 ポツリポツリと
 夜のはざまに

 角のある切り口を
 あなたの背中にそっと立てる
 気づかれもしない誓いを託して


自由詩 爪切りげんまん Copyright 伊那 果 2009-01-25 18:58:12
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