女類
小川 葉

 
妻が百円ショップで
ナンパされた

正直いうと
僕もしたことがある
百円ショップで
ナンパを

妻がいないところで
その男は
どうしてどんな気持ちで
ナンパなんてことを
してしまったのだろう

百円だらけの
価値しかないところで
けっして
百円の価値などではない
人の妻を

だから僕は
いつも行くスーパーの
いちばん高い店で
いちばん甘い
女が好む
よくわからないものを
食べさせた

妻がいないところで
ナンパしたその男にも
今は妻がいるのかもしれない
そんなごくありふれた店で
妻が喜ぶ顔を見ながら
よそ見しておいしいものをまた
さがしているのかもしれない

ふと目が合って会釈した
あの男も
その男なのかもしれないと
思いながら

妻は男という性に
微塵の関心のない遠い世界で
そのよくわからない
甘いものを
たいらげてるというのに
 


自由詩 女類 Copyright 小川 葉 2009-01-25 01:40:04
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