[独り日暮らし]
東雲 李葉
踏み止まろうか踏み出そうか迷う毎日白い線。
快速電車の吸引力を肌で感じ始めている。
存在はある日 突然 消えるものでなくて、
それ自体が無くなっても受け入れる側が認めない。
誰でもいい。誰かいてくれたら。
誰でもいい。誰もいないのだが。
信じてる、なんて容易く会話するもんじゃない。
舌で転がせるほどに軽い意味の証拠だろう。
愛してる、なんてきっと一生貰えない。
与えることにひどく臆病な性格だから。
傷が付かない方法をいつもいつも模索して。
二人以上の食事がしたくて冷めてもまだ箸を割れない。
暮れる日眺める二つの目。二つだけの足。一つの影。
赤い赤い思い出が眩しすぎて何も見えない。
年齢も顧みず留守の右手を伸ばしかけても、
すべてはもう終わった後。この街には誰もいない。
帰りたい。一人になりたい。
帰りたくない。独りは嫌だ。
見つからない食卓はとっくの昔に下げられていた。
冷たい料理を好かない舌は贅沢を覚えたのではない。
過剰なまでに温めて。寒くないよ、寒くないよと。
自分の指で慰める。かわいそうな子、かわいそうな子。
ふと私は明日の朝の白線を思い浮かべる。
一人は軽くてどこかに行ってしまいそうになる。