夜光列車
小川 葉

 
夜行列車に乗って
行こうよ知らないどこかへ
そんなふうに
飛び乗ったのかもしれない
行き先も知らずに

何本も
列車を乗り継いで
生まれて死ぬよりも
ずっと長い
永遠のような時を経て
わたしたちは辿り着いてしまった
人生という名の駅に

夜の車窓から
見えていた景色しか知らない
僕らの目には
この世界はとても眩しくて
時に目を被いたくなることもあるけれど

夜行列車が走る
あの音を思い出している
暗い
けれどもあたたかい
窓の外にはいくつもの
灯りが瞬いて
きれいだったことを

その灯りのひとつに生まれ
生きたまま
青春の頃僕らはまたそこから
夜行列車に飛び乗る

どこまで乗り継いでも
自由なんてない
そんなことは知り尽くしてるのに

夜行列車に乗って
行こうよ知らないどこかへ

行き先はひとつしかない
まだ生まれたことのない命が
夜行列車に飛び乗る
永遠の時の中
わずかに瞬いては消えてゆくように
 


自由詩 夜光列車 Copyright 小川 葉 2009-01-24 01:12:20
notebook Home 戻る