雨の居場所
長元坊

「アメハキライデスカ」
空は悲しげに
「アメハキライデス」
しかめっ面が濡れた歩道を駆け抜ける

「アメハキライデスカ」
空は悲しげに
「アメハキライデス」
硬い路面はいよいよ黒く

「アメハキライデスカ」
空は悲しげに
「キライダトイッテマス」
無人の路上に残された絶縁状

「アメノイバショハドコデスカ」
空は途方に暮れて
「ココニコイ、ココニコイ」
排水溝が無数に口を開き

「ワタシニモキモチハアルノニ・・・」
とうとう空は泣き崩れ
「・・・・・」
涙の音を拾うものなく泣き続けた午前


「・・・・・・・・」
泣き腫らした眼に少しだけ光が射す午後
「ココデ・・ナケバイイ」
涙の向こうでかすかな声がする

「ドコ・・・」
しゃがんだまま呟き
「ココ」
いくつかの声がひとつになって聞こえる

「ドコ・・」
少し顔を上げ
「ココ」
かすむ瞳にポツポツと色が滲み

「ドコ」
優しい風が涙を吹いて
「ココ」
立って世界を見渡すと

「ココ、ココ、ココ」
煙る都市の緑たちが手を振り
「ココニモアルヨ」
公園や散歩道の水たまりが微笑んでいた


 シトシトシトシト
六時間目のチャイムが鳴る頃
 シトシトシトシト
空はうれし涙に暮れていく


 ・・・・・・・・
うれし涙に暮れていく
 ・・・・・・・・
窓辺の緑を眺める人や
水たまりを飛び跳ねる子どもたちを
やさしく見守りながら








自由詩 雨の居場所 Copyright 長元坊 2009-01-22 18:22:17
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