掃除の時間 〜延長コードと僕〜
服部 剛
少し前まで賑わっていた
デイサービスのお年寄りが帰り
部屋ががらんと広くなった
掃除の時間
いつも掃除機をかけるおばちゃんが休みなので
「じゃ、俺がやるか・・・」と掃除機を手に
がらんとした部屋とだだっぴろいロビーの
床に落ちた埃や塵を一人吸い取ってゆく
近くでテーブル拭きをしながら
珍しそうに僕を見る同僚に
「家でも掃除機なんてしたことねぇよ、
今起こってるのは奇跡だなぁ・・・ 」
眉間にしわを寄せながらも
いつになく妙なヤル気を出して
床の隅から隅まで
掃除機をかけてゆく
ぐうたら者のこの僕が1時間かけて
部屋とロビーの床に落ちた
埃と塵がきれいさっぱり消えたのを
満足げに眺めていた
掃除機のコンセントに
つないでいた
長い長い延長コードのドラムロールを
くるくる回して
巻いてゆく
さっきまで僕の引っぱる掃除機に
つながって
1時間も床を這い
日頃は地道に頑張るおばちゃんの
引っぱる掃除機に
つながって
1年中黙って床を這い
今日の仕事を終えて
長い長いコードのすべてを
ドラムロールに巻き終えて
薄汚れた延長コードの姿を見れば
がんばっていたのは
僕一人じゃなかった