掃除の時間 〜延長コードと僕〜 
服部 剛

少し前までにぎわっていた 
デイサービスのお年寄りが帰り 
部屋ががらんと広くなった 
掃除そうじの時間 

いつも掃除機をかけるおばちゃんが休みなので 
「じゃ、俺がやるか・・・」と掃除機を手に 
がらんとした部屋とだだっぴろいロビーの
床に落ちた埃や塵を一人吸い取ってゆく 

近くでテーブル拭きをしながら
珍しそうに僕を見る同僚に 
「家でも掃除機なんてしたことねぇよ、 
 今起こってるのは奇跡だなぁ・・・ 」 

眉間にしわを寄せながらも 
いつになく妙なヤル気を出して 
床の隅から隅まで 
掃除機をかけてゆく 

ぐうたら者のこの僕が1時間かけて 
部屋とロビーの床に落ちた 
埃と塵がきれいさっぱり消えたのを 
満足げに眺めていた 

掃除機のコンセントに 
つないでいた 
長い長い延長コードのドラムロールを 
くるくる回して 
巻いてゆく 

さっきまで僕の引っぱる掃除機に
つながって 
1時間も床を這い 

日頃は地道に頑張るおばちゃんの 
引っぱる掃除機に
つながって 
1年中黙って床を這い 

今日の仕事を終えて 
長い長いコードのすべてを 
ドラムロールに巻き終えて 
薄汚れた延長コードの姿を見れば 

がんばっていたのは 
僕一人じゃなかった 








自由詩 掃除の時間 〜延長コードと僕〜  Copyright 服部 剛 2009-01-21 20:18:30
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