熱と背
木立 悟





火に呼ばれ
膝に呼ばれ
地にしゃがみこむ空から
したたり落ちる血に呼ばれ


前触れもなく終わり はじまる
何も持たない一日の音
傷は風に近くひろがり
傷は轟き傷はひらめく


人が消え家が消え
やがて道も消えてゆくとき
ひとつの背だけがはっきりと残り
ただ何かをうたいつづける


遠のく 遠のく
膝ひとつ分だけ傾いだ世界を
語りかけるもののかけらが
遠のいてゆく


変わりつづける水の音が
姿より速く現われて
手のひらの上よろこびながら
放ち放ち 放たれてゆく


あおむけの鏡に映る灰
雪が雪に消えてゆく音
たくさんのたくさんの夢の終わりに
ひとつの背が淡くかがやいている



















自由詩 熱と背 Copyright 木立 悟 2009-01-19 19:17:49
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