轢死は性干渉に似た味を帯びて
雨を乞う
飛び込んでいいかい?圧死する芥虫は誰かの靴底で汚れない月を羨む。待ち焦がれるのには飽きたのだ、もう惑う時間すら残されていないなら高く飛ぶ方法を考えろ。砕けた硝子の消えてしまいそうな傷跡が残り続けて少し痛い、こんなに触れ続けた君のてのひらの温度を知らない。夜が明けたら次の空のことを想う、舟を漕ぐ脳の中は難解複雑に絡まるあやとりを紐解いて見たことない形を編み出そうぞ。
無口な朝焼けを期待して捨てられなかったものを全て廃棄しよう。追い付かないロマンスのために引いた喫水線、踏み越えて染む助走の速度は月が雲に飲み込まれるスピードと同じ。往来の止んだ線路上に僕は大腿骨を失くして、疲れ果てて綴じる瞼に滲む雨乞いに君が名前を付けて。弾けないピアノに縺れる指を携える僕らは美しい生命体、でしょう?