風邪三段
ヨルノテガム



胸の痛みが
恋のだったら
幾分 朝が澄んでいるのに
コンコンがゴボッ、ゴボッ、と
噴火みたいに茶色いタンを吐き出すのですもの
熱が鼻水がお腹が順序よく反乱し鎮圧されていく
峠を過ぎれば、イヒヒと悪賢い予見を立てることができた
おお わたしの治癒力! なつかしい おまえ!
わたしは熱を出しながら寒気で震えていても
水で濡らしたタオルを額に置いて、次は水まくらかな、
首を冷やそうか、医者はまだ早いぞ、市販の風邪薬はどうだ、
と嘘吹くことができた 昼が長い夜になる
身体のあちこちは痛んでも 痛みを教えてくれる箇所に
敏感っ子ちゃんになれた、そこが和らいだら嬉しいのだ
世の中が資格で安心しきる騒動と苦汁の間、
わたしは病気科学大臣に任命され
風邪段位を授ける組織を立ち上げる
当の大臣は三段位であるからして、強者よ
出てこいや―っ
とのけぞって多量の寝汗は吹き出すのだ
この多量の汗がスポーツのだったら幾分
洗濯漕へ勢いよく放り込めるのに

コンコンはゴボッ、ゴボッ、を続け胸の痛みを増して
「風邪は万病の元であ―る」という立派な演説が聞こえた










自由詩 風邪三段 Copyright ヨルノテガム 2009-01-18 13:28:13
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