花しょうぶ並ぶ
オイタル

花しょうぶ
さびしく並ぶ
ホームの柵で
白いパンをちぎる
包むもののない肩は
冷たく硬く
黒い雨の滴は
長く久しく
朝はこんなにも
騒がしい

ビルを巡る溝渠の水が
空をつかんですばやく流れる
斜線を引かれた電車の窓は
街を透かして上下に震え
ひとしきりめぐり終えては
待つものたちの姿を
次々にまぶたに
にじませる

消えていく水と
閉じていく影
生まれなかった恋と
起こらなかった争い
出会えない明日に
肩たたかれていると
思っていた
わたしの朝

歌うものに
更にかまえず
しみゆくものに
知らされていく
花しょうぶ並ぶ
ホームの柵で


自由詩 花しょうぶ並ぶ Copyright オイタル 2009-01-16 21:17:23
notebook Home 戻る  過去 未来