手紙
依
君は気づいてくれるだろうか
僕からの手紙に
あの時
僕はただの物質でしかなかった
溢れ出てくるこの地球の
力場に漂う熱量のようなもの
雨粒や、命
何もかもが
無意識のなかで創られていき
光あれ、と呟いてはみたけれど
それでも僕はただの物質だった
でも
「信じる」
そう聴こえた時から
たぶん僕は産まれたのだと思う
時空間は
電子や素粒子、あるいは概念
そういうものに対して
絶対的な想像力で超越していく
それは君がもつひとつの精神の働きであり、
僕からのささやかな贈り物でもある
とにかく、そう、
「信じる」と聴こえたその日から
僕は存在するようになった
けれど
心というものはやっかいなもので
そういうものを持つと壊れてしまいやすくなる
そうやって君はだんだんと笑わなくなった
僕もずいぶんと色褪せていってしまった
それでも
「ひと」というものの
想いの熱さや激しさ
美しさ
そういうものから生まれた「僕」は
「君」を愛しいと思わずにはいられない
僕を創ったのは君なのだから
今、この場所から見える世界は
少し寂しい色をしているよ
今の君から
僕の顔は見えるかい
僕の掌から零れてしまった
僕の影に隠れてしまった
そんな場所からも
「信じる」という歌は聴こえてくる
そう、君も歌っている
形なんて最初からなかったんだから、
ただそこに漂う「僕」を
そっと掬ってみればいい
優しいものを望んでいるのなら
僕はいつでも応えるよ
見上げた朝焼けの空に
頬に吹く風に
揺れる草花の匂いに
振り返る人の温かさに
広がる海の懐かしさに
君が感じるこの世界の全てに
“大好きだよ”って書き添えるからね