空白をつかむ
唐草フウ
(「あなたへ」)
じつを言えばあなたはいません
だけどあなた、ということばで呼んでいる
不思議
あなたは誰で
あなたは何で
たとえば朝いれた―トーストに似合う―コーヒーの
ミルクだったりするかもしれないし
あるいは月曜に吹きめいた横につよい風
(でも存在さえしていないかもしれない)
でも存在さえしていないのが
事実なの
ではどうして宛てているか
手紙のように読まれることも 本当は、ない
切手のはるばしょもない
期待のおき所ももちろんない
わたしはそれでも何かへ向けて
発していたいだけだから
せめて言葉というもので「あなた」を
作っていたいだけなのかもしれない
(作っているだけ)
そう不確かであいまいで頼りかかれない
信じられるのは本当は別にあるのかと訊かれても
それも残念ながらここには存在しない
(そこには存在しない?)
だってあなた、と書いているわたしも
あなたから見れば 「あなた」だったから