ネゲブ財団と12世紀のラビ、マイモーンについて
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ネゲブ財団の歴史はさほど古くない。1982年にリチャードJ. Bogomolnyというアメリカ人が始めたものらしい。彼は米国オハイオ州クリーブランドの人で、ファースト・ナショナル・スーパーマーケット社という企業のトップだった人物だ。ネゲブの乾燥地域を何箇所か視察した彼は、そこに「残されたフロンティア」としての潜在的可能性を感じたらしい。最高経営責任者という要職を辞して同財団の設立に取り組んだという。
また、この財団の設立には当初から元ユダヤ国民基金オハイオ州支部長だったサム・ヘーニグという人物の協力が大きかったようだ。同財団の前身はこの二人によって立ち上げられたものらしい。
ここで気になるのがこの「ユダヤ国民基金」という組織。私はこの組織について何も知らないが、ネットで検索してみると、かつてこの組織は、力ずくで取得したパレスチナの土地を、ユダヤ人限定の入植地に仕立て上げるための機関として存在したというような記述がヒットしてくる。ネゲブ財団の創設者の一人が、この「ユダヤ国民基金」の要人の一人であったことは、同財団の倫理性や政治宗教的中立性を判定する上で重い判断材料となるのかも知れない。
ところで、この財団の設立理念は12世紀のユダヤ哲学者モーシェ・ベン=マイモーンの思想に依拠しているらしい。マイモーンはスペインのユダヤ教徒のラビであり、哲学者であったが、自信の改修問題ではイスラム教徒の友人に助けられたり、医者としてイスラムの王侯貴族達を診察したり、神学上の見解の相違から同胞であるユダヤ人から異端視された経歴を持つという。(参考文書:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia) モーシェ・ベン=マイモーン』)
確証はないが、マイモーンというラビの思想には世界市民的な視点があったのではないだろうか。そうであれば、そのマイモーンの思想を継承するネゲブ財団にも、一定の信頼を寄せることが可能かもしれない。彼らの事業運営理念の中に、イスラエル南下政策というような考えがあるのかという点も含めて、今後、そのあたりについて調べてみたいと思う。