釣りをしながら考えた
北村 守通

空が好きという人は少なくない


  「空を自由に行き来できたら」


よく聞く言葉だ
完全なる三次元を体感できる空とは
陸上という束縛からの解放を意味する存在なのかもしれない

  けれども
  ボクは知っている
  完全なる三次元が持つ恐怖を

例えば
ビルの屋上から真下を見下ろす
それはきっと
空を自由に駆け巡る者に拡がる視界のはずなのに
足がすくんでしまうのは何故か

例えば
底の見えない水中で
360度の天球の内の
僅か数分の1しか認識できないことによる
見えない世界の存在
届かない足
届かない指先
個を分別できない背中
迫り来るは
あるはずの足元から
背中から
右下から
左上から
天上から


  だから
  多分


空とはこの上なく恐ろしい場所なのだ
自由とはこの上なく恐ろしいことなのだ
孤独で
危険の意味を
認識することのできない
恐ろしい場所なのだ
多分
我々は
大地という束縛があるからこそ
飽きない程度の悪態をつきつつも
安定して
生き続けることができているのだ



  空は恐怖だ


自由詩 釣りをしながら考えた Copyright 北村 守通 2009-01-14 01:40:47
notebook Home 戻る