雪々
木屋 亞万
床々黒くリノリウム
歩けばかすかに沈む気配
二人寄り添う足跡が
床を静かに押していく
朝一番のアクアリウム
雪々降るのは冬の常
信号ごとに傘を揺すれば
二つの山で雪崩も起きる
立ち止まって心を澄ませば
確かに届く雪の降る音
ゆくゆく雪は高くなり
11時過ぎには飯を食う
蕎麦の温もり、出汁の味
曇る眼鏡を笑う口紅
傘乾いても話は尽きない
行け行けバスは山の奥まで
無理して買った別荘は
最寄りのバス停から1時間
雪に埋もれて半冬眠
掻いて下ろして雪の山
往こう往こうか春が来るまで
暖炉に薪をくべては笑う
話と話の幕間に降りる暗闇
その底に滑り込むのは雪の音
踏み荒らした二人のアートを
蒼く蒼く地塗りしていく