既成の転倒
いっと
あなたに与えられたからだが為すべきことはただ一つだけだと
いつか誰かが叫ぶので、信じがたい事実が辺りを照らす
ぬるり
と、子は真ん中を割り
部屋に満ちる期待を 笑う
ふるえる裸体はみすぼらしい嘘と汚らわしい水にまみれ
それを憂えるように、泣く
その泣き声は生への渇望などではなく
死ぬために割かれる
「終われ」と祈る
ノブを回す音が美しい旋律を奏でた
床に横たわる彼は弱々しげだが
美しかった
飾られたあざやかな見舞いの花も
彼の前では色を失い
無機質な電子音が
地を震わし
部屋は白に染まった
立ち尽くしたわたしは
静謐な魂を
宙に見る
「始まれ」と願う