受光
ホロウ・シカエルボク



水晶が騒ぐような
本当の冬の光
クィーンメリーが跳ね返す朝
トーストの上のシロップ

音楽が消えた劇場のような、ただ空間する日常
ドニ・ラヴァンが手のひらを撃ち抜くシーンを
目の玉を裏返しにしたような気分で見ていた

愛している、と
しゃれこうべの絵葉書に書いてよこした
数年前の恋人のよそいきな文字
ていのいいダイエットを
いつも敢行していた女
すり減るだけの日々が
もたらした結果だとでも、言うつもりなのか

あやふやな存在のように、光の中に溶けてゆく粉雪、名も知らぬ窓辺の残された花は
たいしてかまってやらないのに毎年ささやかな花を咲かせる

あの時お前のベージュのコートの襟元にしがみついてた枯葉のことが気がかりで、どうしてそれをはらってやることも出来なかったのかと
久しく思い出す木枯らしの感触、あやふやな雪に濡れた

路面に描かれたモノトーンのリフレイン

誰も使わなくなった灰皿に絵葉書を飾った
火をつけてやりたいけれど




あいにくマッチ一本


この部屋の中には見つからなかった











祈りの日です、と
テレビのタレントがつぶやいた、俺のしたことは



リモコンを取ってそいつを葬ったことぐらい





自由詩 受光 Copyright ホロウ・シカエルボク 2009-01-13 00:07:12
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