ライオンの死ぬ園
雨を乞う

 

 青い日はいずれ熟していくのだとしたら、次の季節の僕は誰の腕から逃れているのだ。さようならも言えずに去る君の曲がり角は何度だって曲がろうぞ、それで君が帰ってくるのであれば。春を待つ正しい月の真ん中では僕のない子宮から生まれる獣が激しい産声を上げて、芳しい傷を愛す。

 君とひとつになるなずき、宵の金星に薄荷煙草の煙を吐いて、今年も桜は咲くだろうか。発車間際の鬼越駅で誰かのために手を振ってみたら、ライオンの死ぬ園で君が振り返す掌には知能線が横切っている。

 


自由詩 ライオンの死ぬ園 Copyright 雨を乞う 2009-01-12 21:30:27
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