銀幕-Ai-
輪橋 秀綺


 

眼球に飛来する無数の光
無邪気さの中に像を結ぶ

こちらには穏やかな水面
あちらには慟哭する水面

あちらで光が瞬いている
少年はそれを喜ぶだろう
しかしそれは死なのだ
彼の目には見えなくても


ここにあるのは 鮮やかな銀幕
それは本当のリアルを映さない
リアルはどこにあるのだろうか
もしあるとするならば 我思う

決して眼を背けられないように
無邪気なその獣の眼をかっ開き
あちらにいる彼や彼女の悲哀を
それらの感情の華々しき最後を

描き出すことは出来ないものか


悲哀が昇華して星になる
死が昇華して流星になる

銃撃より人叫ばせるうたで
星たちは美しく輝き続ける

あちらに光が流れていく
少年はそれを喜ぶだろう
しかしそれは死なのだ
彼の眼には届かなくても


光の向こうに星がある
星の向こうに記憶がある
記憶のなかに人がいる
人のあいだに物語がある

それを描くことは出来ないものか
それを映すことは出来ないものか


自由詩 銀幕-Ai- Copyright 輪橋 秀綺 2009-01-12 16:25:02
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