創造
緋月 衣瑠香

今からずっと昔
何十代も前の祖先の頃
存在しないという存在を
ゼロという存在に仕立てあげた

見えないものを見ようとして
崖っぷちから恐る恐る覗き込んだ
そこから見えたものは
自分に住みつく闇だった

存在は知っているさ
でも確かめはしない
だって 怖いじゃない

あれからずっと先
何十代も後の子孫の現代人
何もない無表情の空間に
音楽という絵画を作りあげた

音という色が付いている
曲という作品を黙々と眺めてみた
そこに見えたものは
痛みと向き合う心だった

静かなところが好き
閑かなところは嫌い
だって 寂しいじゃない

いつだって人は創りあげてきた
創ることが義務であり
未来への懸け橋だと信じてきた

でも無をつくることはできるのだろうか
無をつくるには破壊しかないのだろうか
存在しないものをつくるなんてできない
そんなものは聞きたくない

無いことを人は嫌う
有ることを人は好む
だって 創造こそが人じゃない

さあ 次は
何をつくろうか
何を求めようか



自由詩 創造 Copyright 緋月 衣瑠香 2009-01-12 12:54:21
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