やさしい音
うみとゆう
ひろいひろい畑にて
老いた木、一本ありました
ひろいひろい畑には
淋しく淋しく木が一本
ひろいひろい畑に生える
老いた淋しいその木には
ここぞとばかり、この秋は
たくさんたくさん柿がなる
淋しい淋しいその木には
小鳥がたくさんやってきて
淋しい淋しい柿の木は
すごくすごくよろこんだ
もう、淋しくないその木には
たったひとつの柿のこる
今は小鳥も眠るころ
老い木にとまり眠ってる
老いた木そろそろ限界で
残った柿も落ちそうだ
老いた木さいごに頑張って
なるべく静かに柿落とす
小鳥が一羽も起きぬよう
そっとそっと、柿落とす
ひろいひろい畑には
誰もしらない音がする
幸せそうな柿の木と
夜しかしらない音がする