光と名前(号令)
木立 悟







真上の月
四つの杯
ひとり去る猫
ひとり去る猫


蝶が蝶を吸いに来る
重なりのむこうの波
波のむこうの冬


より硬いものに触れ光は撓む
くすり指のふるえが
小指へ伝う


空が揺らぎ
降るものも揺らぐ
血は昇り
宙に混じる


鏡に映るものは増えない
鏡だけが増えつづけ
やがて光は音の隅になる


道の上にしか映らない道
どこにも行き場の無い四ツ足が
行方を失くした洞を見つめる


闇をふいに曲がる闇
より暗いものが残す跡
刻む溝をこそ聴きつづける


片方の目が見たものを
もう片方に訳せずに
まなざしは今も石のままでいる


水へ 光へ
先の先へ
やがて光が
尽きる先へ


花の裏側
かたちたちの音
駆け出す影の冠を呼び
取り戻せないものの名を呼ぶ



















自由詩 光と名前(号令) Copyright 木立 悟 2009-01-10 23:00:41
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