ノート(おまえに おまえに)
木立 悟






おまえはひとりのふりをするがいい
常に書かざるを得ないものなら
おまえの余裕の臭いがわかる
おまえはそうして滅びるがいい
ひとりのひとりを知るものは
岩を岩を岩を岩を
水平線から剥がしつづける



ひとりのひとりを歩むものは
何もかもを奪われてなお
白夜に刺され
白夜を赦し
白夜をすぎる



漂うものを言い表せない
ならばおまえはそこにとどまれ
ひとりを知りもせぬままに
ひとりを知るものとして祀られていろ
まばゆくなくかつまばゆいものは
失われたものにこそなおまばゆい



石の畑や道の化生に
慰められて満足か
戻ってくる場のあるうちは
おまえはおまえの演者にすぎない



おまえがひとりを騙るのならば
おまえはおまえを潰す火を見る
火はひたすらおまえに優しい
火はひたすらおまえにひらく



火はひたすらおまえに乗り
火はひたすらおまえになり
おまえ以外もおまえになり
ひとりもおまえも消えてゆく
騙りもおまえも消えてゆく













自由詩 ノート(おまえに おまえに) Copyright 木立 悟 2009-01-10 22:58:34
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