向かって
かんな

わたしは助走する
ふり返る季節にはきっと
落し物などない

雪で描いた夢は
春を待って溶けゆくけれど
消えはしないよと
誰かが言う

春になればまた
花びらが夢を咲かせる
たとえ散りゆくものが
あったとしても

あなたが口ずさむその夢が
夏の風に流されながら
波打ち際に
行きついたとしても

秋の稲穂のように
夢がうなだれながら
殻にこもったまま
動かなかったとしても

消えはしないよと
誰かが言う
ふり返る季節にはきっと
落し物などない

走り抜けてきた季節に
お辞儀をしながら
わたしはまた助走する




自由詩 向かって Copyright かんな 2009-01-10 19:59:58
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