百鬼夜行詩 <3>
nonya



河童


つい50年前にあの子と出会った川縁は
無骨なコンクリートで蓋をされたけれど
僕はまだ生臭い闇が忘れられなくて
水掻きをポケットに突っ込んでそぞろ歩く
都会の夜は頭の皿よりも胸の真ん中が
ヒリヒリと乾いてやり切れないけれど
人の中の薄っぺらな闇には飛び込めない





かまいたち


男の太股を切ったら痩せた鼠が威張ってた
女の踵を切ったら科を作った大蛇が這い出した
子供の向う脛を切ったらあどけない毒虫が
にじり寄るのを慌てて避けた拍子に
老人の頭を切っちまったら悲しい音がして
夕焼け色の飴玉がひとつ地面に転がった
試しに口に放り込んだら塩辛いだけだった





自由詩 百鬼夜行詩 <3> Copyright nonya 2009-01-10 09:59:43
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