イタリ
木屋 亞万
俺のドラゴンボールが火を噴くぜと
若い男は股間を指差して叫ぶ
彼はセーラームーンを求めていたのかもしれない
三日月ではなく満月の戦士
いつかはクレヨンのような子どもを産んでほしい
短くなった色鉛筆に呟いてみたこともある
サザエを筆頭とする海の幸一家のような大家族に憧れる十八歳に
十二色の鉛筆は沈黙を貫いたままだった
スラムなダンクをするような輝いた青春は夢のまた夢
現実はビスケットボリボリのファットマンライフ
二十世紀生まれの少年にはトモダチ一人いやしない
二十一世紀になっても変わることなくヘビーライフ
アンパン一つさえルパンのように盗めずに
誰の心も盗めないまま、自分自身を失っていく
アンパンチの一つでもお見舞いしてやりゃ変わるかも
しれないけれど、大人はみんなハヒフヘホ
バカボンのいない世の中は
それでいいのだと言ってはくれない
キン肉マンの仲間のような超人刑事に囲まれて
ドラゴンボールは火など噴かない