憂 夏
yozo

商店街を抜けると土手の向こうから
途切れ途切れに提供のアナウンスが流れて聞こえ
江戸前のを再現した
真っ白い枝垂れ花火が降りました
わずかに遅れ耳に届く乾いた打ち上げの音が
昨日まで必死だった気持ちに
まっさらな可燃用ゴミ袋の薄い膜を被せ
ただぼんやりとだけ透けて見えました
今日、もうすぐ花火が終わります
メール返ってくるの待ったけど
去年待ち合わせた駅の隅で
初めに上がった音につられ空を見上げたら
もういいかな。と
すとん。と思ったんで
盆なかのユルい人込みにまぎれ
キミとあった日々は、ここらに捨てていこうと思います
夜空にまるく咲くピースマークの変わり花火に
すれ違った子等が帯を揺らし笑います
手に持ったかき氷の蜜が七色を映していました

逝き遅れた蝉がふりしぼる音を軽く飛び越し
大きな花火が乱れ咲きます
キミ用の着信音をそっと消しました


自由詩 憂 夏 Copyright yozo 2004-08-12 16:10:06
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