窓
ウデラコウ
いつのまにか 僕は 僕を 殺して
僕じゃない 僕が かわりに笑っていたんだ
いつのまにか そんな 日常が
楽になっちゃって
あの人もこの人もその人も
もしかしたら 君までも
だましていたのかも しれないよね
閉じた窓は もうガタガタになっちゃってさぁ
簡単には 開かなくなっちゃったんだよ
最近じゃ世の中は 便利なもんで
15.4インチの液晶の中に幾つもの2次元窓を開いて
僕は 必死で 僕を探すんだ
傷つくことを忘れて
傷つけたい衝動にかられて
僕はいったい なんなのさって
窓のムコウにぶつけたって 返事がくるわけ ないよね
ねぇ 本当のところ
僕は 僕に 何を望んでいたんだろう
君がさぁ 一番はじめに 僕に臨んだことってなんだったんだろう
くすんだ窓からかすかに見える青とか赤とか黒って
なんでこんなに美しく見えるんだろうね
何も言わなくなった君は
いつもよりも強く強く 僕を抱きしめて
本当に今度は 死ぬんじゃないかって
でも
君の腕の中で 無様に死ぬのも もしかしたら
格好良いのかなって バカなこと考えて
君をここまで追い詰めた僕が憎くて
僕がこんなになっても離れない君が愛おしくて
曇りガラスよりも曇ってしまった透明な窓を
なんとしてでも 元に戻したくなって
ねぇ 神なんて きっと
いないってわかってんだけど
他人がうらやましくならない日なんて
ないってわかってんだけど
それでも まだ
過ちを犯しすぎた僕が まだ
生きてもいいって いうのなら
細い腕のどこに そんな筋肉隠してたんだよっていうくらい
強く強く 僕を締め付ける君の腕を そっと離して
怖くて 怖くて 掴めなかった君の手を
今度は僕が 決して離さないと 誓うから
もういっかい
あの窓を開くのを
傍で見ていてくれないか
僕は本当に ダメな人だから
すぐに諦めてしまいそうになるから
そうなったらまた
今みたいに 僕を殺す勢いで 抱きしめてよ
いくつもの窓がさぁ 全部明るい光を運んでくれるとは限らなくても
その中で
僕たちだけの 光を見つけるって 約束するから
もう一度 ここから
僕の窓を 開こう